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2006年12月 7日 (木)

トゥモロー・ワールド

Photo_180  映画「トゥモローワールド(アルフォンゾ・キュアロン監督)」を観ました。(ネタバレしないように以下は予告編の範囲で書いています。)
 2027年、生殖能力が無くなり人類に子供が生まれなくなってから18年が経過した世界。人類最年少の18歳の少年が死んだ11月16日が、この物語の始まりです。滅亡の道しか残されていない世界は荒廃し崩壊していく中で、島国の英国のみが移民を排除し軍隊の力で国家体制を辛うじて維持しているという設定です。
 英国を舞台にした近未来物と言えば「Vフォーヴェンデッタ」を連想しますが、あちらは人体実験により生まれた怪人が主人公のコミックの映画化です。本作はごく普通の男セオ(クライヴ・オーウェン)が人類の未来を左右する出来事に巻き込まれていくお話です。
 予告編にも描かれるカフェの爆弾テロのリアリズムにいきなり驚かされます。IRAによる爆弾闘争や、近年の爆弾テロを経験している英国が舞台というのも一層リアルに感じてしまいます。胸倉をいきなり掴まれて、スクリーンの中に引きずり込まれたような気分がしました。そのあとにも戦闘シーンの生々しさや銃殺するシーン、非戦闘員が戦闘に巻き込まれてバタバタと倒れていく様子に、記録映像でも見ているような感覚になるほどです。
 日本でも少子化問題が取りざたされていますから、子供が全く生まれなくなるという設定もそう無謀な話でも無いように思えてくるのです。それに加えて、崩壊していく世界や戦闘シーンを見ていると、これは現実に世界のどこかで今も起こっている事と気付きました。機関銃片手に反乱する人々に対して戦車や戦闘機で応酬する軍隊の図式は、今も中東や他の紛争国で起きている事と同じではありませんか。近未来のSF映画の形をとりつつ、現代を鏡のように映し出しているのだと思います。
 この映画で描かれる2027年のロンドン周辺は現在とあまり変わっていない様に見えます。細かな所に目をやると、ちょっとしたテクノロジーの進歩を感じさせるアイテムが描かれていたりします。未来物のSF映画にありがちな大げさな表現ではなく、ちょっとした進歩がリアルな感じを抱かせます。
 2027年、それはサンダーバードの初期設定2026年の翌年です。サンダーバードの世界では人類滅亡の危機には勿論直面していませんし、どうやら地球温暖化も回避出来ているようです。テクノロジーの描き方については、巨大マシーンや核技術といったものは登場しますが、それ以外は「トゥモローワールド」同様に”現在からちょっとだけ進歩した”世界観で描かれています。これがサンダーバードを一層リアルに感じさせる理由の一つと思います。アルフォンゾ監督たちが近未来の世界を描くために考えた手法を、40年前にサンダーバードのスタッフたちは(考案したのかは不明ですが)使用していたのでした。
 予告編にもある、兵士が胸の前で十字を切って跪く場面や、キャストやスタッフのクレジットが流れる中で音楽に重なる子供たちの笑い声に涙が滲んでしまいました。子供たちの無邪気な笑い声がこんなに大切なものだったとは...。

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コメント

子供が生まれなくなるなんて怖い話しですね。
今は子供の多い地域もあるんですが、内戦や餓死・病気などで大人にならないうちに死んでますね。
日本も虐待やいじめの自殺で子供が死んでるし。子供は大事ですよ。
サンダーバードを作った時代はこんなことを予測しなかったでしょう。
この映画は気になりますね。年末だし、見にいけるといいな。
(終わっちゃたら、レンタルで借りますかな)

投稿: ちゃむちゃむ | 2006年12月 7日 (木) 22時57分

ちゃむちゃむさん、コメントありがとうございます。
 アルフォンゾ・キュアロン監督はハリーポッターの監督さんとして有名なんですが、こんな重たい映画を撮る人とは知りませんでした。映画を観ている時は一種の戦場体験をしたような感じでした。恐らく手持ちカメラの臨場感でしょう。劇場を出れば平和な日本に戻れるのですが、現実に内戦や紛争状態の中で生きている人たちの事を思うと自分の幸運を感じざるを得ません。

投稿: 雷おやじ | 2006年12月 8日 (金) 00時15分

雷おやじさん、TB&コメントありがとうございました。

この作品は、本当にリアリティ溢れていますよね。
近未来といいながら、現代に近い内容が意外性の部分で弱かったのかもしれません。
しかし、いつの世でも赤ん坊の泣き声は大切にしていかなければならないと思います。

投稿: erabu | 2006年12月 9日 (土) 23時15分

erabuさん、こちらこそありがとうございました。
 今日、久しぶりに図書館に行きましてDVDを何点か借りました。「ノーム・チョムスキー=イラク後の世界を語る/中東レポート・アラブの人々から見た自衛隊イラク派兵」などという、小生にはやや固めのテーマの物も借りてしまいました。後半のアラブ人の日本観や平和憲法に関するコメントは、目からうろこの部分もありました。
 女性向けの雑誌の編集長をしているエジプト人女性へのインタビューで、中東は3つの大きな宗教が生まれた場所なのだから、本来は宗教の理念に沿って戦争などの無い世界中で一番平和な地域でなければならないはずと言っていたのが印象的でした。

投稿: 雷おやじ | 2006年12月10日 (日) 00時03分

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» 映画『トゥモロー・ワールド』(お薦め度★★★) [erabu]
監督、アルフォンソ=キュアロン。原作、P=D=ジェイムズ『人類の子供たち』。20 [続きを読む]

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