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2007年6月19日 (火)

貴族の紋章

Photo_297  ペネロープ邸の暖炉の上に飾られている紋章です。この紋章にどのような意味が込められているのか興味が沸き、紋章学の本を読んでみました。

 「ヨーロッパの紋章 紋章学入門(森 護 河出書房新社)」に、紋章の定義として「中世ヨーロッパにおいて、キリスト教支配の貴族社会に始まり、楯にそれぞれ個人を識別できるシンボルをあしらった世襲的制度」とありました。日本の紋章が家紋として家を中心にしているのに対して、西洋では戦場で相手を識別するために楯に描かれたシンボルから発展したせいか、個人を基本としているそうです。

 アイロン型の楯が上部三分の一で分割されているように見えますが、上部三分の一をフィールドに載せたものという解釈が正しいそうです。載せたものはチーフと呼ばれ、フィールドが銀ならばチーフは黒でなければなりません。ペネロープ邸の紋章も楯が銀色で、チーフが黒っぽく見えます。

 楯の表面に描かれた図柄(チャージ)は、剣をX字形に組んだもの(スウォーズ・イン・ソールタイア)です。この紋章になぜ剣が描かれているのでしょうか。「西洋紋章パヴィリオン(印南博之 東京美術)」には、西洋の紋章の五分の一がカンティング・アームズ(語呂合わせの紋章)と書かれています。クレイトン・ウォード家なのでクロス・スウォーズ(?)なのかもしれません。また、チーフの上に描かれたユリの花は”フラ・ダ・リ”と呼ばれ、紋章に使用される植物シンボルの代表的なものです。

 初期には楯だけであった紋章が時代とともに各種のアクセサリーを加えるようになりました。アクセサリーは単なる装飾ではなく、形、色、その有無などによって王、公爵、伯爵、法皇であることが一見して判別できる仕組みになっているそうです。ペネロープ邸の紋章で言えば、楯を支える動物(サポーター)、楯の上に載っている兜(ヘルメット)、兜の上のクレスト(兜飾り)、これらの一番下に巻物があります。

 ヘルメットの形がバーヘルメット(兜正面の開口部に格子が付いている)で、向かって左側を向いていることからも、公爵から男爵までの貴族である事が判ります。

 ヘルメットの上のクレストは、同一家族や場合により同一家系が同じ形のものを使用できるため、家紋的な要素を持っています。残念ながら、ペネロープ邸の紋章のクレストが何を表しているのか、小生にはよく判りません。

 サポーターは動物や植物などさまざまな物がありますが、イングランドの場合、個人では貴族以上の紋章に使用が限られているそうです。向かい合う獅子はよく見かけるものですが、舌を出しているのにも何か意味が込められているのでしょう。

 巻物に書かれているのがモットーです。”主義、主張、座右銘、金言、その家系の開祖が好んだ言葉や、中興の祖が決めた座右銘などが多い”そうです。言語的にはラテン語のものが圧倒的に多く、フランス古語も多く見られるとあり、ラテン語の辞書で調べてみました。SEMPERは、つねに、いつも、恒常的にといった意味があるそうです。次のFLOREATが難解でした。辞書にそのものずばりの和訳が載っておらず、おそらくFLOREO(繁栄する)の語尾が変化したものと想像できます。(自分の人生でラテン語の辞書を開く機会が訪れる事など、想像もしていませんでした。) 

 さて、この紋章はいったい誰のものなのでしょうか。前記「紋章学入門」には「女子相続人は男兄弟のない娘をいい、父の財産、爵位を継承するばかりでなく紋章も継承し、結婚すれば夫の紋章に自分の紋章を加える権利を持っている。」とありますし、「1995年からは一定の資格を設けて女性独自の紋章を持つ道が開かれた。」となっています。(第一号は鉄の女サッチャーさん。) このため、暖炉の上の紋章はペネロープ嬢ご本人のものという可能性を考えたのですが、「未婚の女性が紋章を使用する場合は父の紋章を菱形の楯、稀には卵形の楯に配して使用する。」とありますし、婦人の紋章には兜やクレストを使用しないそうなので、やはり父君の紋章なのでしょう。

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コメント

ロイヤルファミリーの紋章を見るとよくわかりますね。
個人ごとに違うので、よく王室ご用達ブランドもその紋章で誰が愛用かわかります。
雷おやじ様の説明はよくわかりました。これからは、ちょっと注意してみましょう。
ユリの花といえば、フランス王室を思い出します。
鳥だとワシか白鳥でかな。アヒルを紋章にはいれてないなぁ。
次回のイラストには雷おやじ様のオリジナル紋章が.....作りませんか

投稿: ちゃむちゃむ | 2007年6月19日 (火) 23時22分

ちゃむちゃむさん、コメントありがとうございます。
 紋章に興味を持ち始めたところ、身の回りに沢山の紋章がある事に気付きました。お酒のラベルの紋章や、フランスの自動車メーカーのロゴに使われている獅子など、今までは気に留めることもほとんど無いか、せいぜいカッコいいと思う程度でした。紋章のルールは大変複雑ですが、どのような意味が込められているか判ると面白いですね。
 サンダーバードに登場する紋章は、これ以外にもいくつかありますので、また調べてみたいと思います。
 オリジナル紋章は...そのような物を持てる程の事を成しておりませんので、まだまだ修行が必要かと。

投稿: 雷おやじ | 2007年6月20日 (水) 00時10分

http://www.asahi-net.or.jp/~eu3k-kbys/FAB2/goods_badge2.htm#6

上記アドレスの紋章は,1966年1月22日に発行された
「LADY PENELOPE」と雑誌の表紙に載っている紋章の
バッジです。

この紋章は,冠,小紋章/盾,信条になっており,
冠には,王冠が,
小紋章/盾には,
左上:ペネロープの頭文字Pが
右上:5羽の鳥が
左下:稲妻が
右下:貴族・王家の継承者である王冠が
信条には,「エンガットに可愛く,しかも死ぬほど危険に」
が描かれています。

まとめると,
ペネロープ嬢は,5羽の雷鳥「5機のサンダーバード」に
縁ある,可愛く危険な貴族の正統後継者である。
という事になります。

雷おやじさん
ある方から教えて頂いた説明でした。

投稿: FAB2(小林) | 2007年6月21日 (木) 23時02分

FAB2(小林)さん、コメントありがとうございます。
 小林さんのコレクションの素晴らしさには常々敬服しております。バッジの紹介ありがとうございました。信条に書かれている通り、ペネロープ嬢は”可愛く危険な貴族の正当な後継者”ですね。
 「ヨーロッパの紋章 紋章学入門(森 護 河出書房新社)」を図書館に返却してしまったので詳しくはわからないのですが、冠に4本の飾りがありますので”男爵冠”と思われます。これはペネロープ嬢のお父上が男爵であることを示しているのかもしれませんね。

投稿: 雷おやじ | 2007年6月22日 (金) 06時29分

どうでもいい話なんですけど、スコットランドだと、10万種類以上の紋章があるそうです。(^^;) 地酒のスコッチにはよく紋章のデザインされたものがありますが、ぺネロープ家の紋章が使われたお酒があってもいいですよねー。 

投稿: 三型 | 2007年6月22日 (金) 23時49分

三型さん、コメントありがとうございます。
 スコットランドだけで10万種類もの紋章があるのですか。凄い数ですね。世界全体では幾つになる事やら。
 小生の身の回りの紋章で一番身近なのは、やはりお酒関係ですね。飲み終わった後のワインのラベルを剥がしてコレクションしていた時期がありました。今はもうめんどくさくて、飲むだけにしてますが。
 ペネロープ嬢がスコッチ作りに関わるとすれば、伝統の製法を頑なに守り続けるということもあると思いますが、トレーシーカンパニーの協力で最新技術を利用した製法も考えられますね。

投稿: 雷おやじ | 2007年6月23日 (土) 10時07分

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